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教育―次の世代に何を伝えるのか ④
「教育―次の世代に何を伝えるのか」 その④
◆教えないことが教えることに

             ホクレア号 ホクレア号

龍村:面白い話があるんですが、ナイノア・トンプソンという、ハワイとタヒチの間を星と太陽と波を頼りに渡った彼が、それを今度は次の世代に伝えていくという立場に立たざるをえなくなって、6人か7人のタイプの違う、ナビゲーターになろうとしている生徒と一緒に乗って、タヒチに向かってスタートしたんですよ。ナビゲーターにとって、夜明け前に起きていて、水平線に星がどこにどのように入ってくるかを見ることが不可欠のことなんだそうです。ところが、或る日彼が起きてみると、生徒全員がまだ寝てたんですって。これはなぜかと言えば、彼がいるから寝ちゃってるんですよ。

中井:安心している。

龍村:それで彼は頭に来て、まだ出てしばらくだったもんですから、近くの島を通った時に、朝方海に飛び込んで逃げたんです。そこから、この6、7人の連中が本気でやりだして、結局ちゃんとたどり着いたんだそうです。彼が言うには、或るところまで教えたけども、結局、全員タイプが違うから、それぞれ皆自分のやり方しかないっていうのが分かってきて、教育しきって教育を放棄するところにいったという。

 ――或る程度まで教えることは前提として必要だけども、それ以上は教えないことの方が、ずっと教えることになる。

龍村:ただ、教えないけど、自分でやんなきゃいけないってシチュエーションが出てこないとダメなんです。最終的には100人いれば100通りの道がある、それを自分で行かなきゃいけないんだということになれば、最後は教えられないっていうことはあるんですけど、ここで重要なのは、そのための力を持っているというベーシックな信頼。そういう信頼を教育する側が持てるかどうか。

中井:ベースに信頼感があるということは重要で、トンプソンが海に飛び込んで逃げたのも、彼らを見捨てたわけではない。実際には離れたけれども、彼らに対する信頼感があった。残った人たちにも、そういう信頼感がベースにあったと思うんですよね。

龍村:そう、それ、見えないもんですよね。ただ、その見えないものを、どう作ったか、教育したかっていうことですけどね。亡くなった人と自分の関係を思っても、もう教えてもらえないけど、亡くなった人とのつながりがあることによって、自分が新たにいろんなことをやっていけるっていうことがありますが、見えないつながりがあるっていうことでしょう。それが連綿と人間なら人間でつながっていくという、そういう感性ですね。それは、何も詩的な虚妄ではなく、そういう実感が持てるかどうかですよね。


◆生命力と祈り

中井:教育の場面で、子供をなるべく自然に近い状態においてやるということ、それはその人間の感性が輝いてくという意味ではいいわけですけども、それは単に甘やかすだけではない。私は稲の研究で、自然農法の研究をここ10年ぐらいやっています。なるべく農薬とか化学肥料は使わないで、自然に近い状態で稲を育てる。自然に近い状態においてやるっていうことは、化学肥料をやるよりは太らないし、厳しいことではあるわけです。ところが、稲自身は、自然をうまく見て、自然に合わせて成長していくんですよね。
 1993年の大冷害のときに、岩手県の最北端の松尾村で実験やってたんです。あの近辺ほとんど収穫ゼロの状態だったんですが、私たちの自然農法の稲はほぼ完璧に実ったんです。まわりも皆、びっくりしました。冷害っていう条件がなければ、ああいう強さは見えなかったんですけども、そういう状況で生命力が強くなるわけですね。自然農法でやると、目に見える部分の生育の仕方が貧弱なんですが、ちょっと抜いて見ると、根っこがしっかり張ってるんです。だから、教育というものを考える場合も、子どもをどうのこうのという前に、その土壌をどう作るかが、重要だと思うんです。

               新稲1
               田植え後1ヶ月のイネの姿。
           自然農法イネ(写真左)は地上部は小さいが
           地下部の根はしっかり成長しているのがわかる


 ――問題は、子ども達にどれだけ根を張らせることができるかっていうことですね。

中井:そこで甘やかして化学肥料どんどんやれば、どんどん太るけど、根っこは全然張らない。それで大冷害が来たら全部ダメになる。

               新稲2
         大冷害の中で、自然農法イネ(写真右)は、ほぼ完全に実った
         岩手県松尾村で朝日新聞社提供(1993年10月)


龍村:生命力って一体何なんだろうって考えると、生まれて初めての状況に出くわしたときに、それに適応できる能力の多様性があるかないか、じゃないでしょうか。物量的にたくさんあったら生命力があるというんじゃなくて、生まれて初めての状況に出くわしたときに、それに対応できる能力をどれぐらい備えているかが生命力、というふうに。これはモラルのようなことに聞こえるかも知れませんが、そうじゃない。実際にその方が、技術の進歩とかでも、新しいアイディアの生まれてくる可能性があると思うんですね。

中井:そうですね。監督の映画で「魂を語ることを怖れるなかれ!」と言われてますが、それは精神世界だけということではなく、科学の行き着くところと精神世界の行き着くところは一致するだろうっていう、そういう希望ですよね。祈りっていうか。

龍村:祈りっていうと、また精神世界的に聞こえるんですが、そうじゃないですよね。祈りっていうのは、こうありたいという、意志の原点なんです。評論家は、状況はこうなってる、これは大変だとかって評論をするんですが、あなたの意志はどこにあるの、どういうふうになりたいのって問うと、悲観的なことばっかり言うんです。情勢分析すれば悲観的だっていうのは分かるんです。だってそれは事実ですから。ただ評論してればどうなるのかって、ご本人の意志はどこにあるのって思ったときに、一番原初的なのは、やはり祈りのようなこころですよ。こうあってほしいという。だから祈りっていうのは、必ずしも宗教的なものじゃないと思うんです。祈りは意志の一番最初の出発点だって。


◆「21世紀を生きる子供たちへ」

 ――いま製作中の『第四番』の「21世紀を生きる子供たちへ」のメッセージも、「意志の原点」としての祈りになると思いますが、それも含め、これからどうありたいと考えているかについて、少しお話いただけますか。

龍村:先のことというのはあんまり考えてない。こうなるであろうという評論とかは、とってもできない。だったら未来どうなるかわかんないだから、どうしようもないのかって、絶対そんなことはない。さしあたっていま目の前にあって、これを解決しなきゃということに誠実にぶつかっていくことが、未来を作っていくだろうと思ってます。そういう感覚がありますので、21世紀どうなるかということは全くわかりませんが、ただ、さきほど申し上げた霊性(スピリチャリティ)の目覚めということは、絶対に必要だと思うんです。一人一人のこころに、僕はどう自分の短い人生の中で関われるのかって思った時、僕は映画監督ですので、自分の映画を見た人がそのことによって勇気を得るとか、そういうことに役立ってほしいなという思いはあります。

中井:『地球交響曲(ガイアシンフォニー)』を通じて、僕は強い希望と祈りをいつも感じます。一番から四番へと基本的なメッセージは同じだと思うんですけど、今度の四番の「21世紀を生きる子供たちへ」というメッセージには別の新しさを感じています。

龍村:そうですね。大げさにいえば、教育ということになると思いますが、いわゆる教育とは違うものが教育なんだということが分かってくる、そういう気がするんです。学問だとか教育だとかいわれているようなものが、本当はむしろそうじゃないようなところを含んでいるんだよと。

中井:教育をどうするかっていう具体的な作業を、当然僕らはやらないといけないけど、今日の対談は、きっと教育が変わっていくことにつながっていく。そんなふうに僕は思いますね。

 ――教育の問題が、教育の問題にとどまらない広がりが見えてきたという気がします。話はますます面白くなってきたのですが、予定してた時間を大分過ぎてしまいましたので、今日のところはこれで閉めさせていただきたいと思います。どうも長時間ありがとうございました。



・・・・・ ・・・・・ ・・・・・  

いかがでしたか?
この記事は阪大のページの
『静岡大学フォーラム』第3号(2001年6月末発行)のところにあったものです。

   →『静岡大学フォーラム』第3号・osaka-u (PDF版)
   →『静岡大学フォーラム』第3号・osaka-u

10年まえのものですが、私自身にとても勉強になることが書かれていたのでUPしました。
すごく内容が濃いので、日々実践しながら また何度も学び直したいと思いました。
(自分の子供たちには間に合わなかったかも知れないなぁ(^^;))

最後までお読みいただき 有難う御座いました!

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かぼちゃん

Author:かぼちゃん
ふたりの男子の母です
松山ケンイチさん大好きだぁw

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